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◆高出さんが割って見せてくれた竹
◆「小割2本鎌」のうちわ。小割だけでも手間のかかった作業なのに、鎌は色違いのものが2本。穴明けも難しそう。「小割」は普通のうちわよりも更に弾力が増すが、「2本鎌はただの飾り」だとか。
「うちわづくり」「骨づくり」で、高出さんが一番こだわっているのは材料である「竹の材質」。高出さんが使うのは、3〜5年の真竹で、しかも山奥に生えているもの。川や池から最低でも200mは離れている所で育ったものに限る。竹の根は地中で200m位伸びているので、水源から200m以内だと十分に水を吸っており、そういう竹は内身が厚くやわらかい。うちわに向くのは内身が締まって固く、弾力のある・よくしなる竹である。「3〜5年モノの竹」というのも、日にさらされて良い具合に締まっているのだそうだ。(竹というのは1年目は皮をかぶっており、2年目に初めて日に当たるのでその時は青々としている。で、3年・4年と経つにつれて日焼けしてくる。だから「竹は青い方がきれいだ」と思って青い竹を使うのはまだまだ素人の証拠らしい。「青い竹じゃないといけないのは正月の門松だけ」とか…)
冬に木の枝を守る「雪吊り」に使う竹も、うちわ同様「弾力」が大切で、弾力がない竹を使用すると雪の重みに耐えられずにポキッと折れてしまう。だから雪吊りの竹も同じく3〜4年は経った竹が使用される。
高出さんは、四国八十八カ所の88番札所である大窪から南の竹を決まった業者さんから買い入れているが、一般の人が使う竹よりも1割くらい値段も高いのだとか。「良い竹」「悪い竹」は見ただけでわかる。良い竹を仕入れるためには業者さんとの信頼関係しかないとおっしゃっていた。
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「うちわの骨」にもいろいろある。「小割」というのがあって、通常のうちわの穂骨よりも更に細く割かれているもので、見た目にも繊細なうちわに仕上がる。高出さんに勧められて、普通のうちわとあおぎ比べてみると、確かにしなり方が違う。波打つような感覚で、力をそれほど入れなくてもやわらかな風が来るような気がする。この「小割」は香川県の伝統工芸に指定されている技術で、非常に細かく手間のかかる作業なため、骨師さんにしかできないものだそうだ。私達はうちわを選ぶ時にはついつい「形」や「絵柄」が優先してしまう事が多い。でも、高出さんは「絵柄だけでなく、このあおいでみた感触(=骨のしなり具合)で『本当に良いうちわ』を選んでほしい」とおっしゃっていた。
「竹骨」というのは「機能美」。紙を貼る前の竹骨はそれだけでもオブジェになるくらい美しいものだ。是非とも「うちわの港ミュージアム」や「うちわ工房 竹」で竹骨状態のものも見てみてほしい。ただ単に造形としての美しさだけでなく、「機能美」というのは当然「機能が優れている」ものである。丸亀うちわには、そんな技術がさりげなく息づいている。
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高出さんに「骨だけでなく、貼りもやってみようと思った事はないのか」と訊いてみたら、少し考えた後、「貼りはやろうと思った事はない。自分がやって来た中では『分業』が当たり前で、自分は骨師だ」とおっしゃった。
<取材・文 S>
骨師・伝統工芸士 高出 雅之 氏