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◆竹は3日間ほど貯水槽につけてあるものを使用する。水分が多いところで育って内身が厚い竹はしなりが悪く、この「もみ」の作業で折れてしまうそうだ。
「後継者育成事業」で全くの素人さんに教えていると、もういろいろと口を出したくなる事があるらしい。最近の若い人に教える時には「言いたい事を我慢する事が大事だ」と笑っておられた。最初は道具が手に付かず、ほとんど付きっきりで教えなきゃいけない生徒も、2週間もしたら道具に慣れてくる。
高出雅之さんは、昭和3年生れの76歳。「丸亀うちわ」づくりは今でも現役である。それに加えてこの数年は「後継者育成事業」の先生、そしてイベントなどに「実演」で出かけられるなど、多忙な毎日を送っておられる。現在丸亀には7人の伝統工芸士がいるが、「骨師」と呼ばれる現業の竹骨の職人さんはたった3人。そしてそのお一人が今回登場していただいた高出さんである。貼りの職人さんは若手の方も多いのに対して、「骨師」として骨づくりのみに携わる“プロフェッショナル”は非常に少ない。もっともっと現役で頑張って頂かないといけない方なのである。
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現在、高出さんはいろいろな所に「うちわづくりの実演」に出かける。そうすると、中には高出さんの真ん前に陣取って、1時間以上も飽きもせずにじーっと見ている人がいるのだそうだ。そこまで熱心ではなくても、多くの人が高出さんの技術に目が釘付けになってしまう。「木取り」をした竹の「穂骨」になる部分の内身を削り(ふしはだけ)、「切り込み機」で穂先の10cmくらいの所まで切り込みを素早く入れる()。そしてその切り込みを両手でもみほぐすようにしてうちわの柄の部分になる節の上まで(内身を削った所まで)切り込みを延ばしていくのだが(もみ)、とても70を超えた方とは思えない力強さと迫力だ。もみをする時には竹がS字型に曲がり、穂先は見事に0.5mmに揃い、これは実際に見てみないとそのすごさはわかってもらえないかもしれない。「木取り」から「もみ」までの作業があっという間なので、確かに何本見ても見飽きないだろう。
高出さんは、そんな熱心なファンと時々会話しながら、自分で割った竹をこっそり(内緒で)プレゼントしてしまったりするらしい。「嬉しそうに持って帰る」という高出さんご自身がとても嬉しそうで、こんな所にも「手づくりの暖かさ・良さ」が残っている事に気がつく。年季の入った技を披露するだけでなく、このようなやり方で人を惹きつける高出さんは丸亀うちわの超一級のPRマンだ。
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高出さんは、意外にも「骨づくり」を始めたのは21〜22歳の頃なのだそうだ。てっきり家業がうちわやさんだと思っていた私はびっくり。その当時は国鉄の工場で働いていたのだが、家族が作ってしまった借金の返済のために最初は友達に勧められて「内職」をしていたが、国鉄の退職金を返済に充て、その後本職として骨師の道に入ったのだとか。当時国鉄での賃金が6千円〜7千円の時代、うちわづくりは景気が良かった。
近所には骨を作る人もいれば貼りをする人も大勢いた。家業こそ違え、やはり子供の頃から「うちわづくり」の中で育ったために、「うちわを作る」事はすごく「自然体」だったのだそうだ。「うちわにまつわる一番古い思い出は何か」と訊いてみたところ、「普通に身の回りにあったものなのでわからない」ということだった。(そりゃあ、そうですね)
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「丸亀うちわ」骨師
伝統工芸士
高出雅之(たかいで まさゆき)さん